第21章 幸せな日々
「もちろん、うちと違うのは分かってる。でも翔の家事能力を考えるとどうしたってニノの負担が大きいだろ?」
一応疑問形ではあるが、もう答えは分かりきっているから潤は俺の返事を待たずに続ける。
「智はちゃんと口に出して文句言ってくれたから手遅れになる前にどうにかなったけど。ニノって不満とかあっても自分の中に溜め込んで、なかなか口に出さないだろ?それでお節介だとは思ったけど、ちょっと心配になってさ…」
何だかんだ言って面倒見のいい潤は、自分の経験から俺たちのことを心配してくれたんだろう。
それでこんな話を振ったのか。
でも潤の優しさにジーンとしたのも束の間
「どうする?ある日急にニノの不満が爆発して、気づいたら書き置き残して消えてたら…」
嫌な例え話にザーッと血の気が引いていくのが自分で分かった。
だってその状況が想像出来てしまったから。
本当は分かってるんだ。
家事が苦手だなんて言い訳で、俺もカズの優しさに甘えてるだけだって。
カズはいつだって大丈夫だよ気にしないでって笑ってくれるけど、本当は無理してたら?少しずつ俺への不満が溜まっていたら?
ある日突然カズがいなくなる…?
考えたくもないのに、妙に現実味のある想像は頭から離れてくれなくて。
心臓がバクバクして、だんだん周囲の音が聞こえなくなっていく。
「まぁ、智からニノは今の生活が幸せで幸せで仕方ないらしいよって聞いてるから、本当に余計なお世話なんだけどな」
だから潤が笑って付け足した言葉も俺の耳には届かなかった。