第21章 幸せな日々
あと、心配だったことは実はもう1つあって。
カズとの同棲が実現するまで、高校の修学旅行で約束したあの日から数年掛かったわけで。
その間、俺は妄想に妄想を重ねてしまっていて。
同棲生活に期待し過ぎている自覚があったから、妄想と現実とのギャップを受け入れられなかったらどうしようって密かに悩んでたんだ。
でもそれも不要な心配だった。
だって驚くことに現実は妄想をはるかに超えてきたから。
例えば──
毎日同じベッドで一緒に寝てるんだけど、カズは毎朝目覚ましが鳴るか鳴らないかくらいのタイミングで起きて、俺が目を覚ます前にアラームを止めてしまう。
そして俺を起こさないようにそーっとベッドから抜け出して、朝食を作って、準備万端整えてから俺を起こしてくれるんだけど。
キッチンから美味しそうな匂いが漂う中
「おはよ、翔ちゃん♡朝だよ、起きて?」
って、可愛く声をかけながら優しく体を揺すって起こしてくれて。
寝ぼけまなこの俺を見てくすくす笑いながら、俺の頬にちゅっとおはようのキスをしてくれるんだ。
可愛いでしょ?
めちゃくちゃに可愛いでしょ?
朝から萌え転がってしまうくらい可愛いんだよ!!
実際、初めてこれをやられた朝は転がりすぎてベッドから落ちた。
カズはものすごい心配してくれたけど、痛みを感じないくらい幸せだった。
目覚めたはずなのに、まだ夢を見てるんじゃないかと思うくらい最高な1日の始まり。
これが同棲を始めてからほぼ毎朝繰り返されてるとか!
これだけでも、同棲開始前の心配してた自分を殴り飛ばしてやりたいくらい幸せだ。
…ちなみに、なんで寝ている間のことをこんな詳細に知ってるかというと、一度カズより先に起きることができた日があって。
寝たふりをしながら、こっそりカズの様子を伺っていたから。
まぁ、我ながらちょっと気持ち悪いなと思ったのでカズには内緒にしてる。