第20章 卒業式
赤くなってるであろう俺の頬にそっと手を添えて、翔ちゃんがふわっと表情を和らげた。
「カズでいいんじゃないよ。俺は、カズ “が” いいんだ。カズ以外の誰かと付き合うなんて考えたこともないよ。カズのことが大好きで、誰よりも何よりも大切だから一緒にいたいって思うんだ」
「翔ちゃん…」
言葉だけじゃなくて、その目や俺に触れてる手からも翔ちゃんの想いが伝わってくるみたい。
不安が溶けてなくなって、幸せな気持ちだけで胸がいっぱいになる。
「それに前にも言ったと思うけど、俺はカズが泣いたり怒ったりありのままの姿を見せてくれることが嬉しいんだよ。カズともっと近づける気がするから」
本当に嬉しそうで、どこか楽しそうな翔ちゃん。
でもそれを聞いてハッとした。
確かにこんな風な態度を翔ちゃんに対してとるなんて、ちょっと前まで考えられなかった。
だって翔ちゃんに嫌われたくないから。
だから、なるべく良いとこだけを見せて。
ダメなところや汚い心は必死で隠して。
何かあっても胸の中に溜め込んで翔ちゃんには絶対見せないようにしてた。
さっき俺の前ではカッコつけてたいって言った翔ちゃんと同じ。
俺も翔ちゃんには可愛いって思ってもらいたかったんだ。
それなのに、いつの間にか感情のままに怒って泣いて、めちゃくちゃ素をさらけだすようになってた。
それは自分でも気づいてなかったくらい自然な変化で。
でも変化の理由はわかる気がした。