第20章 卒業式
「それにさ、確かに俺たちはすごく遠回りしてたのかもしれないけど…」
ほんのちょっと勇気を出せば、もっと早く翔ちゃんと恋人同士になれたのかもしれない。
智とか潤くんとか傍から俺たちのことを見てた人たちは、もしかしたら何やってんだってもどかしく思ってたかも。
「でも、俺はいつだってすごく楽しかった。翔ちゃんと仲良くなってから毎日すごく幸せだった」
友だちだったけど、翔ちゃんはずっと隣にいてくれて。
いつだって優しくて、何かあれば守ってくれて。
翔ちゃんに恋をしてから俺の世界はキラキラしてた。
そりゃ、時には切なくなったりした。
悲しくて、苦しくなる日だってあった。
それでも、そういうのもひっくるめて全部全部大切な思い出なの。
あの日々が今の幸せに繋がってるんだから。
「楽しかったことも苦しかったことも、翔ちゃんと過ごした全部の時間が俺の宝物だよ。翔ちゃんはちがうの?」
「違わない!俺だってカズと過ごした全ての時間を宝物だと思ってる!」
翔ちゃんの力強い答えに嬉しくなる。
なのに翔ちゃんはまたすぐにシュンと肩を落としちゃって。
「でも、それとカズを傷つけたことは別だから…」
あぁ、またそこに戻っちゃった…
それを言ったら俺だって翔ちゃんのこと泣かせちゃうくらい傷つけたのに。
本当にお互いさまだから気にしないでいいのに。