第20章 卒業式
「謝らないで、翔ちゃん」
そんなの謝ることじゃないんだから、そんな顔しないで。
「そんなの俺だって同じだよ?」
「え?」
首を傾げつつも、ちゃんと抱きしめ返してくれるあったかい腕に安心する。
「俺だって翔ちゃんと仲良くなれたのが嬉しくて。でも恋愛感情を持ってるってバレたら友だちですらいられなくなっちゃうと思ってて」
そばにいられるなら、ずっと友だちのままでいいって。
自分の気持ちを隠してた。
だからお互いさまなの。
「こわくて告白しようなんて考えたこともなかった。俺も同じなの。だから謝らないで?」
「カズ…」
翔ちゃんの腕の力が強くなる。
「でも…」
それでもまだ何かもにょもにょ言おうとするから。
「来て」
翔ちゃんの手を引っ張って校門の前まで移動した。
今は誰もいない何にもない空間。
「ここ、覚えてる?」
「もちろん!」
さすがに忘れられてることはないだろうと思ってたけど、即答してもらえたらやっぱりホッとした。
ここは俺にとってはすごく大切な場所だから。
「よかった」
「俺としては恥ずかしいから忘れてほしい気もするけど…」
本当に恥ずかしいらしく、ぽそっと呟いた翔ちゃんの頬は赤く染まってるけど。
「絶対忘れない!!忘れられるわけないじゃん!!」
そんなこと出来るわけなくて、力いっぱい叫んでしまった。
だって、ここは初めて2人の想いが重なった場所。
翔ちゃんが告白してくれた場所だもん。