第20章 卒業式
一目惚れだなんてすごくびっくりしたけど、驚きの気持ちが落ち着いたらすごく嬉しくなって。
込み上げる喜びに自然と頬が緩んでしまう。
「教室に入って一目惚れした子と同じクラスだって分かった瞬間、その幸運に感謝した。めちゃくちゃ嬉しくて、カズと少しでも仲良くなれるよう頑張ろうって思った」
当時のことを思い出してるのか翔ちゃんもにこにこしてて。
でも、ふいにその表情が曇った。
「そう思ってたんだけど、いざとなると俺は普通に話し掛けることも出来なくてさ…」
情けない顔になって、しゅんと肩を落としてしまう。
………あれ?
翔ちゃんは落ち込んでるけど、俺は何かが引っかかって思わず首を傾げた。
確かに入学直後に翔ちゃんと話した記憶はない。
でも改めて考えるとちょっとおかしくない?
だって、翔ちゃんは人見知りとは程遠い性格で。
誰とでも気さくに話せるし、それこそ初対面の人にだってなんの躊躇いもなく声を掛けられる。
それに常に周りに気を配ってるような人だから、本来ならなかなかクラスに馴染めずにいた外部生の俺たちに真っ先に声を掛けてくれそうだ。
それなのに、全くと言っていいほど会話がなかったなんて。
当時は翔ちゃんのことを全然知らなかったから何とも思ってなかったけど、今振り返るとすごく不自然な気がする。
単純に気になって。
「なんで話し掛けられなかったの?」
「え…?えーと…それはさ…」
疑問をそのまま口にしたら、翔ちゃんは口ごもりながら不自然に視線をあちこち彷徨わせて。
やがて観念したように赤い顔で大きく息を吐いた。