第20章 卒業式
「あの朝、ここで潤とクラス分けを見てたら、急に大きな叫び声が聞こえて。何かと思って振り向いたら、そこにカズと智くんと雅紀がいたんだ」
ああ、それは俺も覚えてる。
3人お互いしか知り合いがいない状態で、雅紀だけクラスが離れちゃって。
いやだ!さみしい!って、騒いだんだよ。
新しい環境で一人ぼっちになる不安はわかるけど、ただでさえアウェイな場所で変に人目を集めて気まずかったんだよね。
あの場に翔ちゃんも居たんだ。
騒いだのは俺じゃないけど、一緒にいた俺も十分目立ってたってことか…
「騒いでたのは雅紀だったけど、俺にはカズしか見えなかった」
「…え?」
「カズを見た瞬間、俺の世界から音が消えて。カズ以外何も見えなくなった」
照れくさそうに、でもまっすぐに俺の目を見ながら伝えられて、恥ずかしくてジワジワ頬が熱くなる。
「カズの笑顔を見た瞬間に、心臓がわしづかみにされて息も出来なくなって…一瞬で恋に落ちてた」
さっき裏庭で、俺を助けに来てくれた時にはもう好きだったって言ってたけど。
まさか、入学式の朝に一目惚れしてくれてたなんて。
高校生活の最初も最初から俺のこと好きでいてくれたなんて。
全然知らなかった…
だって入学式の後も、翔ちゃんとは同じクラスだったけど、ほとんど話した記憶がない。
丸山くんの件があって初めて仲良くなったんだ。
まさか翔ちゃんが俺のこと好きだなんて、想像したこともなかった。