第20章 卒業式
用意周到な翔ちゃんが大きな紙袋を2つ準備してくれてたから、2人で協力して机の上の山を片付けて。
当たり前みたいに俺の分の紙袋まで持った翔ちゃんが俺の手を掴んだ。
「そろそろ帰ろうか」
「…うん」
翔ちゃんに手を引かれて教室を出て、静かな廊下を手を繋いだまま歩く。
いつもと同じ場所をいつもと同じように歩いてるだけなのに。
こうやって校内を翔ちゃんと歩けるのも今日が最後だと思うと、さみしくて切なくて胸がぎゅっとなった。
翔ちゃんは当然のように下駄箱に向かってるけど、何だか俺はこのまま帰ったら後悔するような気がして。
「カズ?」
突然足を止めた俺を翔ちゃんが怪訝そうに振り返った。
「ねぇ、翔ちゃん…俺たちも早く帰らなきゃダメなのかな?」
「どうしたの?何かやり残したことでもあるの?」
俺の質問の意図が分からないのか翔ちゃんはちょっと困惑したような顔をしてるけど。
そう、翔ちゃんの言う通り。
俺にはやり残したことがあるんだ。
「……あのね、最後に一緒にぐるっと校内をまわらない?」
「校内を?」
「うん。俺、翔ちゃんと思い出めぐりがしたい」
学校には翔ちゃんとの思い出がたくさんあるから。
最後に翔ちゃんと一緒に校内をめぐって高校生活を振り返りたい。
「それを高校生活最後の思い出にしたいんだ」
あんなこわい思いをしたバタバタな騒動が最後の思い出だなんてイヤだもん。
最後は楽しく終わりたい。