第20章 卒業式
………で。
結論から言うと、窓を開けたのは校長先生だった。
俺たちが座り込んでいたのがちょうど校長室の前だったみたいで。
外の騒がしさに気付いて、何事かと窓を開けて。
周りを見回した後、何気なく下げた視線の先に俺たちがいて。
まさかそんなところに人が隠れてるなんて思ってなかったんだろうね。
すごくびっくりしてた。
もちろん俺たちも心臓が止まるほど驚いたけど、それが追手じゃなくて校長先生だってわかった瞬間
「校長先生たすけて!!」
俺は全力で助けを求めてた。
「俺たち追われてるの!絶対つかまりたくないの!お願い!!たすけて!!」
先生は何も事情を知らないから目を白黒させてたけど、俺の必死さは伝わったようで。
「入りなさい」
何も聞かずに窓から校長室に招き入れてくれた。
翔ちゃんの手を借りつつ何とか窓枠を乗り越える。
そのまま室内に転がり込むと、翔ちゃんもひらりと飛び込んできてすぐに窓を閉めた。
「とりあえず座って」
校長先生は疲れ果ててる俺たちを見て、ソファに座るよう勧めると、自らお茶を淹れてくれて。
お菓子まで出してきて持てなしてくれた。
早く説明しろと急かすこともなく、向かいに座ってお茶を啜ってる。
無理に話を聞き出そうとしない優しさが身に染みて。
「先生、いきなりごめんね」
何だか申し訳なくなってぺこりと頭を下げると、校長先生は穏やかに微笑んだ。
「事情を聞いてもいいのかな?」
「うん」
元から隠す気なんてない。
俺たちは何も悪いことしてないもん。
校長先生を巻き込んじゃったんだから、事情を説明するのは当たり前だ。