第20章 卒業式
大体さ、なんで卒業式にこんな大規模な鬼ごっこみたいな隠れんぼみたいなことしなきゃいけないの?
俺たちにとって大切な日のはずなのに、なんでこんな目に遭わなきゃなんないんだろ。
しんみりした気持ちなんて、とっくにどこかに吹っ飛んでいってしまった。
疲れも相まって、この理不尽な状況に腹が立って仕方ない。
せっかくの旅立ちの日なんだから、静かに見送ってくれよ!!
じゃなかったら、放っておいてくれ!!
でも俺の心の叫びなんて、追っ掛けてくるやつらには届かない。
「いたかっ?」
「いや、向こうにはいなかった!」
「まだ校舎内なんじゃないか?」
「さっき外に出てくのを見たやつが居たらしいぞ!」
すぐにやかましく情報交換しながら、バタバタと錯綜する足音が聞こえてきた。
俺たちの気持ちを考えられる人間なら、最初から追い掛けたりしないか…
小さく諦めのため息を吐いて。
見つからないように、身を縮めて、息を潜めて。
お願いだからこっちに来ないでくれと祈る。
何度経験したって、この時間はドキドキして心臓に悪い。
頼むからさっさと諦めてくれよ!
でも俺の願いも虚しく足音は確実にこちらに近付いてくる。
後ろは壁だし、この狭い空間で周りを囲まれたらもうどこにも逃げ場がない。
不安でぎゅっと翔ちゃんの手を握りしめる。
その時───
ガラッと座ってた真上の窓が開いた。
絶体絶命だと思った。