第20章 卒業式
なんで?
俺たちは上の階になんて行ってない。
校庭からここに直接来たんだ。
だから上で誰かと会うなんてありえない。
なのに、なんでそんなウソを…?
「上?2階か?」
「いや、3階…」
「分かった!ありがとう!」
俺が首をひねっている間に、後から来たやつらは階段を駆け上がって行った。
どうやら謎のウソをそのまま信じたようだ。
バタバタと足音が遠ざかって行く。
よくわかんないけど、とりあえずピンチを脱したことに安堵していたら、1人残っていた先に来た彼がこちらに向かって来る気配がした。
ええ!?なんでなんで??
今まで見向きもしなかったじゃん!!
俺たちに気づいてなかったんじゃなかったの!?
またまたピンチだ…
でも相手は1人。
それなら逃げれそうな気はする。
足の震えもおさまったし…うん、大丈夫!
いつでも走り出せるように心の準備をしておこう。
前を向いたままの翔ちゃんの手を握ると、すぐに握り返された。
でも身構える俺たちに掛けられたのは、聞き覚えのある柔らかな声だった。
「先輩方、もう大丈夫ですよ」
目の前までやって来た相手の顔を見て、今度こそ心から安心して力が抜けていく。
「カメ…」
「亀梨くん…」
そこに居たのは上田たちと仲が良い亀梨くんだった。