第20章 卒業式
警戒する俺たちの近くで立ち止まった誰かは、それ以上こちらに近付いて来ることはなかった。
翔ちゃんの背中からそーっと顔を出して様子を伺ってみると、そいつはこちらに背を向けて立っていて。
もしかして俺たちの存在に気付いてない?
まだ油断しちゃダメだけど、全く振り向く素振りのない後ろ姿にホッとしてしまう。
誰かと待ち合わせしてるとか、たまたま何か用があってここに来ただけの、俺たちとは無関係なやつなのかもしれない。
それならば、このまま何も気付かずにここから立ち去ってくれ!
必死に祈っていたら、今度はバタバタと複数人の足音が聞こえてきた。
「居たか?」
「いや、向こうには居なかった!」
「荷物は教室にあったから、絶対まだ校内に居るはずだ!」
「………っっ」
聞こえてきた会話に、思わず声を上げそうになって。
慌てて手で口を押えた。
今度こそ俺たちを追ってきてるやつらっぽい。
走ってどんどんこちらに近付いてくる気配に、翔ちゃんが静かに身構える。
俺は今まで以上に壁にぴったり背中をつけて、少しでも目立たないよう身を小さくした。
ドタバタと走ってきたやつらは、そこに立ってるやつを見つけると足を止めた。
「なぁ!この辺で櫻井先輩と二宮先輩見なかったか?」
「は?櫻井先輩と二宮先輩?」
突然の問い掛けに、声を掛けられた方は戸惑ってるぽかったけど。
「2人ならさっき上で見たけど…」
………え?
そいつははっきりと “上で見た” と答えた。