第20章 卒業式
「ふぅ…うん、だいじょぶ…」
全力で走ったせいで息はまだ苦しいけど。
あの場から逃げられて。
安心したからか、いつの間にか震えも吐き気も消えていた。
強がりじゃなくて本当にもう大丈夫だって思う。
でも翔ちゃんは信じられないのか、心配そうな顔のままで。
「本当に大丈夫だよ」
「…良かった」
にこっと笑い掛けると翔ちゃんも少し表情を和らげたけど。
でもまだ笑顔とは程遠い。
眉毛がへにゃっと下がってる。
まだ心配してるのかな?
それとも他に何か気掛かりがあるの?
なんだか元気がない翔ちゃんが心配で。
じっと見てたら、翔ちゃんが急に頭を下げた。
「ごめん」
「え?」
「怖い思いさせてごめんね」
「なんで?翔ちゃんは何も悪くないよ?」
翔ちゃんに謝られる意味がわからなくて困ってしまう。
「でも怖かったでしょ?」
「こわかったけど…でも、そんなの翔ちゃんのせいじゃないじゃん。悪いのはあいつらだもん」
翔ちゃんは何も悪くない。
責任を感じる必要なんてないのに翔ちゃんは自分を責めてた。
「カズのこと守るって言ったのに、結局何も出来なかった…本当にごめん…」
「そんなことない!そんなこと言ったら、俺はもっと何も出来なかった!むしろ俺がいたから翔ちゃんは何も出来なかったんだよ…ごめんなさい…」
「そんなことっ…」
翔ちゃんは否定しようとしてくれるけど、俺が足手まといだったのは自分が一番よくわかってる。
翔ちゃんが責任を感じてるなら、謝らなきゃいけないのは俺の方だ。
「翔ちゃんはちゃんと守ってくれた…翔ちゃんがいなかったら、俺ダメだったもん…」
翔ちゃんがいなかったら耐えきれなかった。
たぶん、あのままぶっ倒れてたと思う。
翔ちゃんが何も出来なかったなんてウソだよ。
翔ちゃんは全力で俺を守ってくれたよ。
「ありがとう、翔ちゃん」
本当に感謝してるから。
自分を責めないで。