第20章 卒業式
校庭から脱出して校舎内に駆け込んだものの、すぐに後輩たちが追いかけて来る気配がした。
そりゃ上田たちだけであの人数を完全に抑え込むのは無理だよね。
あの状況から逃がしてくれただけでもすごいことだよ。
後でちゃんとお礼を言わなくちゃ…なんて考えながら、翔ちゃんに引っ張られるようにして廊下を全力疾走する。
幸い先生とは会わなかったけど、見つかったら確実に怒られるスピードだ。
すれ違う事情を何も知らない生徒はみんな目を丸くして俺たちを見てた。
本当はこのまま帰ってしまうのが一番いいんだと思う。
でも残念ながら教室に荷物を置きっぱなしにしてきちゃってて。
さすがに卒業式に荷物を放置して帰るなんて訳にはいかないよね。
だからってノコノコ教室に向かったら、追いかけて来てるやつらにすぐ見つかっちゃうだろう。
またさっきみたいな状況になるのは絶対に絶対にイヤだ。
そしたらもう、しばらくどこかに隠れてみんなが諦めるのを待つしかないんだろうな。
翔ちゃんも同じように考えたんだと思う。
人目を避けながらどんどん進み、1階の端っこにある普段あまり使う人のいない階段の下のちょうど周りから死角になってる場所まで来ると、やっと足を止めた。
辺りには誰もいない。
完全に翔ちゃんと2人きりになれたことを確認したら、足から力が抜けていった。
その場にズルズルとしゃがみこんで、上がってしまった息を必死に整える。
「カズ、大丈夫?」
ゼェゼェしてる俺を見た翔ちゃんは、心配そうに寄り添って背中をさすってくれる。
翔ちゃんは俺ほど息が乱れてない。
まだ余裕がありそうで、こんな時でもカッコよくてズルい。