第20章 卒業式
けっこうガタイのいいやつだったのに。
いとも軽々と、ポイ。
「えっ!?」
「うわぁっ!!」
抵抗する間もなく投げられた、たまたま上田の前にいた不運なやつは、周りを巻き込みながら地面に倒れ込んだ。
悲鳴やうめき声が上がってるけど、上田はちらりとも振り返らず次のターゲットに向かって手を伸ばしてる。
俺の想像を超える荒業に思わずポカンとしてしまう。
簡単にやってるように見えるけど、少なくとも俺に真似できる手段じゃないな。
「うわっ、来るな!」
「やめて!助けて!」
無言で淡々と人を放り投げる上田にあちこちで悲鳴が上がるけど、逃げたくても人が多すぎて逃げようがないみたい。
上田は何を言われても耳を貸さず、ひたすら自分の目の前にいるやつを左右にポイポイ放り投げながら突き進んでいくから、上田の通った後には自然と道が出来ていく。
その出来た道が塞がらないように、菊池と増田が人垣を押さえてくれてて。
出来た空間に突っ込んでこようとするやつは容赦なくふっ飛ばされてる。
上田が強いのは何となくわかってたけど。
菊池も、いつもニコニコしてる増田までもが強くてびっくりする。
「カズ!」
ついみんなの活躍をぼーっと眺めてしまっていたけど、翔ちゃんに声を掛けられてハッと我に返った。
後輩が俺たちのために体を張って頑張ってくれてるのに、俺がぼんやりしてちゃダメだよ。
「行くよ!」
「うん!」
翔ちゃんに抱き抱えられるようにしながら、震える足を必死に動かして。
上田たちが作ってくれた道を走り抜けた。