第20章 卒業式
「二宮先輩、大丈夫ですか?」
増田に心配そうに声を掛けられて。
本当は大丈夫って言いたかったけど、震えも止まらないし、さっきから吐き気もおさまらなくて。
翔ちゃんの支えがなかったら崩れ落ちてそうなくらいの状態で。
「…あんま…だい、じょぶ…じゃ、ない…」
強がることすら出来ずに弱音がそのまま口から零れてしまった。
先輩なのに情けない…
それを聞いて、増田と菊池の顔が気遣わしげに曇ったけど。
一番分かりやすく顔色が変わったのは上田だった。
「すいません!姐さ…ニノミヤセンパイがそこまで追い詰められてたなんて…悠長に様子見てる場合じゃなかったっすね…」
後輩失格だ…なんて。
上田は何も悪くないのに、むしろ巻き込まれた被害者なのに、自分を責めてものすごく落ち込んでる。
いや、どうでもいいけど今姐さんって言いかけたよね?その呼び方まだ諦めてなかったのか…
「本当にすいませんでした!すぐ道を作りますから!ここから離れて早く休んでください!」
上田はひとしきり1人で反省すると、キッと顔を上げて周りを睨みながらそんなことを言い出した。
「道…?どうやって?」
上田は簡単そうに言うけど、この状態でどうしたらそんなことが出来るんだ?
「まぁ、強行突破しかないでしょうね」
「こいつら興奮状態で話が通じなくなってますからね」
首を傾げる俺に、答えをくれたのは菊池と増田。
2人とも肩を竦めてやれやれって顔をしてるけど、上田の提案を否定したりはしない。
強行突破って何となく穏やかじゃない響きだけど、具体的にどうするんだろう?
頭の中は疑問符だらけだけど、俺にはこの状況を何とかする打開策も力もなくて。
おとなしく様子を伺っていたら。
突然、上田が目の前にいたやつを捕まえてポイッと放り投げた。