第20章 卒業式
怒りのままに叫んだけど、興奮状態なやつらの耳には全く届かなかったようだ。
動きを止めるどころか、そのうち何を求めてるのか四方八方から手が伸びてきた。
翔ちゃんがしっかり抱き締めてくれてるし、俺の周りは生徒会の後輩たちが守るように囲んでくれてて。
伸びてくる手も次々に払い落としてくれてるけど、それでも全ての手を防ぐことは出来なくて。
誰とも知れない手が、俺の顔に体に触れてくる。
気持ち悪い……
熱のこもった視線、通じない言葉。
一方的な好意の押しつけと、こちらの意思を無視した暴力的な行為は嫌でも俺のトラウマを呼び起こす。
もう怒る余裕なんてなくて。
この状況に恐怖しかなくて。
「翔ちゃん…」
「大丈夫、カズのことは絶対守るからね」
震えて思うように動かない手で、それでも必死に翔ちゃんにしがみつくと、俺を抱く腕の力が強くなった。
翔ちゃんの腕の中は安心する。
翔ちゃんに対して絶対の信頼感もある。
でも現実的にこの状況ではさすがの翔ちゃんも、すぐにどうこうすることは出来ないみたいだ。
……ううん、ちがう。
俺がお荷物で翔ちゃんの足を引っ張ってるんだ。
翔ちゃん1人ならどうとでもなっただろう。
俺がいなければ、もしかしたらこんな状況に陥る前に何とか出来たかもしれない。
何だかすごく申し訳ない気持ちになる。
でも、翔ちゃんは俺を抱く手を絶対に緩めなかった。