第20章 卒業式
「本当に俺だけなら良かったんだけどね…残念ながら可愛過すぎるカズは俺以外にもモテモテなんだよ…」
「えぇ?」
「まぁ、自覚がないのもカズの可愛いところだけどね…」
腑に落ちない顔になっているだろう俺を見ると、翔ちゃんは俺の頭を撫でながら、心配が絶えないよって苦笑した。
俺だって翔ちゃんを困らせたくはないんだけど。
でも俺がモテるなんてさ。
そんなの信じられないし、信じたくもない。
だって、本当にこの子たちが俺のこと…?
そういう目で後輩たちを見たら、それだけで背中がゾワっとした。
やだやだ!
翔ちゃん以外にモテたって全然嬉しくない。
むしろ知らない人からの好意はこわい。
もうすっかり忘れたつもりでいたけど、やっぱり丸山くんの件は俺の中で完全には消えてなくて。
何だか不安になってしまって、縋るように翔ちゃんの服をぎゅっと握った。
「カズ…?」
「俺は翔ちゃんが好き…翔ちゃんだけが好きだもん…」
翔ちゃんからしたらいきなり情緒不安定になられて意味わかんないと思うけど。
それでも言わずにいられなかった。
「うん、俺もカズだけが好きだよ」
翔ちゃんは何かを察してくれたのか、安心させるように同じ言葉を返してくれる。
「この気持ちは誰にも負けないし、誰にもカズは渡さないから。安心してね」
「…うん」
その力強い言葉に。
頭や背中を優しく撫でてくれる手に。
安心して、無意識に強ばってた体から力が抜けていく。
でも次の瞬間
「先輩方…」
菊池に何かを警戒するような低い声で呼び掛けられて。
何かと思って顔を上げて、菊池の視線を辿って、またすぐに固まってしまった。