第20章 卒業式
「……翔ちゃん?」
「なぁに?」
呼び掛けてみたら一応笑顔を向けてくれたけど、その目は全く笑ってなくて。
やっぱりこわい。
「……なんか怒ってる?」
「怒ってる!」
恐る恐る聞いてみたら力いっぱい即答されて涙目になってしまう。
俺何しちゃったのかな…
でも一生懸命考えても翔ちゃんが怒ってる原因に心当たりがなくて。
「あっ、違うからね!カズに怒ってるんじゃないよ!」
泣きそうなのを必死に我慢してたら、気付いた翔ちゃんが慌てて否定してくれた。
とりあえず俺が何かしちゃったわけじゃないみたいで安心したけど。
でも翔ちゃんはまだまだ機嫌が悪くて。
「……じゃあ、何に怒ってるの?」
「こいつらが!俺のカズを狙ってるから!」
「へ…?」
理由を尋ねてみたら、予想外の答えが返ってきて首を傾げてしまった。
俺を狙ってる??
狙われてるのは翔ちゃんでしょ??
「この子たちみんな翔ちゃんのことが好きなんでしょ?」
「違うよ!半数以上がカズのこと好きだって叫んでるでしょ!」
確認したら、翔ちゃんはまだ周りを囲んで好き勝手に叫んでる子たちを睨みながら声を荒らげた。
えぇー?確かに時々俺の名前も聞こえてくるなとは思ってたけど…
耳を澄ましてみても、正直うるさすぎて誰が何を言ってるのかまではわからない。
「俺のこと好きだなんて、そんなもの好き翔ちゃんしかいないと思うんだけど…」
思わず心の声が口から出ちゃったら、翔ちゃんは深い深いため息を吐いた。