第20章 卒業式
やれ最後に想いを伝えたいだの、やれボタンが欲しいだの、やれ一緒に写真が撮りたいだの。
みんなが口々に思いの丈を叫んでる。
展開についていけなかった俺はしばらくポカンとしちゃったけど、はたと我に返ってやっと気付いた。
あぁ、ここにいる全員翔ちゃんのことが好きで、告白するために集まって来てたのか…って。
そりゃ翔ちゃんが人気者でモテモテなのは嫌ってほど知ってるし。
最後に告白しときたいって気持ちも分からなくはない。
でも、こうやってバレンタインの時の比じゃない人数が一斉に告白してるのを目の当たりにしちゃうと、ちょっと気が遠くなりそうっていうか。
あまりの人数の多さとその熱量に圧倒されちゃって。
相手が誰だって負けるもんかって思ってたのに、ちょっと弱気になってしまう。
だって、もともとうちの学校イケメン率高いなって思ってたけど。
これだけ人数が集まると、カッコイイやつとか顔がキレイなやつとか可愛いやつとか、とにかく色んな種類のイケメンが選り取りみどり状態なんだもん。
変わらぬ力強さで俺を抱きしめてくれてる翔ちゃんのことは信じたいけど、ちょっと心が揺らいでたらどうしようって不安になっちゃったりもして。
様子を伺おうとそっと翔ちゃんの顔を見てびっくりした。
デレデレしてたらどうしようって心配だったけど、翔ちゃんはデレるどころかものすごい怖い顔をしてたから。