第20章 卒業式
その緊張に震える声に俺も振り向くと、真っ赤な顔で熱い視線を翔ちゃんに向ける俺の知らない子がいて。
俺のことなんて視界に入ってないのか、見ないフリなのかはわかんないけど、その子はまっすぐに翔ちゃんだけを見ていて。
それだけでこの子の言いたいことが察せられてしまって、胸がザワザワする。
「卒業おめでとうございますっ…僕、最後にどうしても先輩に伝えたいことがあってっ…」
ああ、やっぱり。
これはどう考えても、告白…だよね?
自分の中で確定した瞬間、思わず翔ちゃんの腕にぎゅっとしがみついた。
この後輩くんからしたらすごく嫌だよね。
告白しようとしてる相手に、その恋人がべったり引っついてるんだもん。
マウント取られてると思うよね。
でも、イヤで。
翔ちゃんを取られたくなくて。
誰にどう思われようが、今翔ちゃんから離れることなんて出来なかった。
もちろん翔ちゃんのことは信じてる。
今だって俺を安心させるようにすぐに抱き寄せてくれて。
翔ちゃんが俺を捨てて、この子の告白を受け入れるとは思えない。
思えないけど、それでもイヤなんだもん。
自分以外の翔ちゃんへの想いなんて聞きたくないよ。
でも俺にこの子の告白を邪魔する権利なんてないこともわかってて。
「僕っ、先輩のことがっ…」
その子が口を開くのを止めることも出来ずに、翔ちゃんの腕の中で息をひそめていたら
「ちょっと待ったーーー!!!」
耳が痛くなるくらい大きな声が告白を遮った。
驚いて反射的にびくりと肩が跳ねる。
でも、その突然の大声にもびっくりしたけど、誰がいきなり叫んだのか気になって周りを見回してみて。
「………え?」
もっとびっくりすることになった。