第20章 卒業式
今日は卒業式で。
うちの学校は大学附属校だけど、大学のキャンパスは違う場所にあるから。
朝、いつもみたいに翔ちゃんと学校に向かいながら、こうやって2人で登校するのは今日が最後だと思ったら胸がキュってなったし。
思い出のたくさん詰まった校舎や、お世話になった先生たちと今日でお別れだと思うと鼻の奥がツンとしてセンチメンタルな気分になった。
でも、翔ちゃんや智たち。それに大半の同級生たちとは大学も一緒だという安心感があって。
堂々と卒業生代表の挨拶をした翔ちゃんのカッコ良さに惚れ直したり、在校生代表だった菊池が涙を堪えきれてなくてうっかりもらい泣きしたり。
担任の先生が生徒の誰よりも号泣してて笑っちゃったり。
もちろん寂しい気持ちはあるけど、泣いたり笑ったりしながらも穏やかな気持ちで過ごしていた。
……で。
最後に校庭の満開の桜の下でみんなと写真の撮り合いっこをして。
智と潤くんは美術部の、雅紀と風間はバスケ部の、それぞれ後輩たちに挨拶してくるって言うから一旦別れて。
俺と翔ちゃんは生徒会の後輩たちと別れを惜しんでた。
ここまでは何も問題はなかったんだよ。
ごく普通の卒業式の光景だったと思う。
でも、後輩たちとの話が一段落ついた時
「あのっ、櫻井先輩っ…」
意を決したように翔ちゃんに声を掛けてきた後輩がいて。
ここから雲行きが怪しくなっていったんだ。