第19章 誕生祝い to Sho * 3rd
カズは本当に大急ぎで着替えたらしく、よく見ればネクタイはしていないし、シャツの裾が片方ズボンから飛び出してる。
化粧を落として、髪の毛はウィッグを外したままなのかくちゃっとしていて。
もうどう見ても女子高生には見えない。
すっかり男の格好に戻ったカズを見て、未練がましく残っていたやつらも諦めがついたのか、一様に残念そうな顔をしながら去っていった。
もちろん俺にだって残念に思う気持ちはある。
女装したカズはめちゃくちゃ可愛かったし、次はいつ見れるか分からないから。
でもこんなちょっとだらしない格好のカズだって俺には可愛くて堪らない。
「今日は最高の誕生日プレゼントをありがとう。すごく嬉しかったよ」
「ふふ、良かった」
カズをぎゅっと抱き締めながらお礼を伝えると、カズは嬉しそうに笑う。
「女子高生めちゃくちゃ似合ってて可愛かった」
「ありがと///」
女装を褒めれば照れたようにはにかんで。
乱れた髪の毛を整えるように頭を撫でてあげると、気持ち良さそうに目を細めてされるがままになってたけど。
「でも…俺のために大急ぎで着替えてくれた髪の毛がくちゃくちゃの今のカズもすごく可愛い」
「え…?」
そう言い足すと、カズはハッとしたように俺から体を離して髪の毛を触ったり自分の格好を見下ろしたりして。
それでやっと自分の状態を把握したのか、ワタワタとシャツの裾をしまい始めた。
恥ずかしさで頬をピンクに染めているのも可愛い。
どんな格好をしていても、カズがカズであるだけで愛おしい。
「女装してるカズもそのままのカズも、俺はどんなカズもみんな大好きだよ」
カズの全てを丸ごと愛してる。
身だしなみを整えたカズをもう一度抱き締めてそう告げたら、カズは火でも吹きそうなくらいまっ赤になってしまったけど。
ふわりと花が開くように、本当に嬉しそうに笑ってくれた。