第19章 誕生祝い to Sho * 3rd
たどり着いた部室の鍵を開けたのは智くん。
昼休みからずっと持っていたらしい。
密かにバスケ部員たちが待ち構えてるんじゃないかと心配していたんだけど、そんなこともなく。
こっそり胸を撫で下ろしていたら、風間に「後輩たちに今日は来ないよう言ってあるから安心して」と耳打ちされた。
バレバレだったのはちょっと恥ずかしかったけど、事前にしっかり対処してくれていた風間に深く感謝した。
カズはさっさと部室に入って行こうとするけど、俺はここまでだ。
「翔ちゃん?」
ドアの手前で足を止めると、カズが俺を不思議そうに見た。
「俺は外で待ってるよ」
「え?なんで?」
カズは首を傾げるけど、理由なんてただ1つ!
「カズが安心して着替えられるようにここで見張ってるよ」
「え?」
「のぞきをしようとする不届き者がいるかもしれないからね」
「ええ?」
カズは目を丸くして、いつも教室で着替えてるし…とか、わざわざ男の着替えをのぞく人なんかいない…とか言うけど。
今日はいつもと違うし、こんな可愛いカズを見て不埒なことを考える輩がいないとは言い切れない。
いや、むしろ絶対いるって!
心配性だと笑われたって、これは譲れない!
俺はここでカズを守る!
「着替えは俺が手伝うよ」
「俺も」
頑なに動かない俺を見て、すぐに智くんと風間がカズに寄り添ってくれた。
2人がついててくれるなら俺も安心だ。
それでもカズはじっと俺を見ていたけど、俺に折れる気がないのが分かったんだろう。
「じゃあ急いで着替える!」
なんて言いながら、勢いよくリボンを外し始めた。
「ちょっ…待って!」
この場で脱ぎ出しそうな勢いにめちゃくちゃ焦って、慌ててカズの手を掴んで止めて。
「ゆっくりで大丈夫だから!中で着替えて!ちゃんと鍵はしめてね!」
しっかり念を押しながら、カズを部室の中に押し込んだ。
何かを期待していたらしい野次馬たちからはブーイングの声が上がったけど、殺意を込めて睨んだらすぐに静かになった。