第19章 誕生祝い to Sho * 3rd
食べないとカズが悲しむことは分かってる。
でも俺にはこの芸術品みたいなお弁当を崩すことなんて出来ない。
毎回思うけど、このまま永久保存したい。
まだその方法を見つけられていないのが悔しい。
でもそんな俺のことをカズもよく分かってる。
放っておいたらいつまでも食べないで眺めてるだけだって。
だからカズは容赦なく弁当に箸を突っ込むと、一口すくって俺の口に運んだ。
「はい、翔ちゃん♡あーんして♡」
弁当が崩れてしまったことは悲しいけれど、カズが食べさせてくれるというのに拒否するなんてありえない。
「あーん…うまっ!」
素直に食べると、口に入れた瞬間もう美味い!!
「よかった♡」
カズは安心したように笑うと、すぐに次の一口を運んでくれる。
「次はから揚げ!あーん♡」
「あーん♡」
ああ、可愛い!!
ああ、幸せ!!
こんな可愛すぎるくらい可愛いカズに手作り弁当を食べさせてもらえるなんて、なんて幸せな誕生日だろう。
カズと出会ってから毎年、今年が人生で一番幸せな誕生日だって思うけど。
やっぱり今年も今日が一番幸せだって思うよ。
周りから向けられる羨望の眼差しも、嫉妬や憎悪混じりの呪いの言葉だって今日は甘んじて受けよう。
可愛いカズは誰にも見せたくないけど、この幸せは誰彼構わず自慢してまわりたい。
あー、今の俺は宇宙一の幸せ者だなぁ…なんて思いながら、しみじみ幸せと美味しいお弁当を噛み締めた。