第19章 誕生祝い to Sho * 3rd
「よかったね、ニノ」
「うん♡ありがと、智♡」
カズはサプライズ大成功!なんて智くんとハイタッチして喜んでいたけど。
「あ!」
急に大きな声を出すと、俺の手を取った。
「ごめんね、翔ちゃん。時間なくなっちゃうね…お腹空いたでしょ?」
色々衝撃的でそんなこと忘れていたけど、確かに腹は減っている。
意識したら途端に腹がぐーっと鳴って。
恥ずかしくて赤面する俺を見てカズがクスクス笑った。
「早くおべんと食べよ♡」
そのままカズに手を引かれて歩き出すと、周りを取り囲んでいた野次馬がザッと左右に別れて道が出来た。
さっきのモーセ現象はこれか…
納得しつつ出来た隙間を通り抜けると、すぐに道が塞がって。
何故か野次馬たちも後をぞろぞろついてくる。
思わず振り返って力いっぱい睨んだら、ビクッと怯んで一瞬足を止めたけど。
俺が視線を戻すと、またそろそろとついてくる気配がした。
ちらりと振り返ると、ピタッと足を止めてそっぽを向く。
“だるまさんがころんだ” か!!
腹が立つけど、カズの可愛さに引き寄せられてしまう気持ちは分からなくはない。
分からなくはなくても、許せるものでもないけど。
本当はこんなに可愛いカズを誰にも見せたくない。
でも俺にはここで野次馬に使う時間などない。
この後にカズの手作り弁当を食べるという一大イベントが待ってるんだから。
とりあえず一定の距離は保っているし、カズがまるっと野次馬の存在を無視しているから。
めちゃくちゃ嫌だけど、俺もひとまずは放っておくことにした。