第19章 誕生祝い to Sho * 3rd
カズの顔から悲しそうな表情が消えた。
「……じゃあ、女装してなくても手を繋いだり、こうやってぎゅってしたりしていいの?」
それでも、まだちょっと不安そうにおずおずという感じで確認してくる。
不謹慎だとは思うけど、質問の内容が可愛くて、思わずにやけそうになってしまった。
「もちろんだよ!むしろしてくれなかったら泣くよ!」
「……泣くの?」
「泣く!大号泣だよ!」
「ふふっ」
胸を張って答えたら、冗談だと思ったのかカズは可愛らしくクスクス笑った。
いや、別に冗談を言ったつもりはなく。
また避けられたりしたら本気で泣くんだけど…
まぁ、カズが笑ってくれるなら何でもいいか。
「よかった…」
ひとしきり笑ったカズが安心したみたいに体の力を抜いて。
俺の背中に腕をまわしてきゅっとコートを掴んだのが分かったから、嬉しくなってぎゅううううっとカズを抱き締める腕に力を込めた。
カズが潰れちゃうかなって心配になるけど、カズが何も言わずに抱き締め返してくれるから。
幸せすぎて腕の力を緩めることが出来ない。
でも浮かれてばかりはいられない。
やっと笑顔を見せてくれたカズだけど、その目はまだ赤い。
カズが怒ってなかった。仲直りできた。
めでたしめでたし…で終わらせていいわけない。
俺がカズを傷つけて泣かせたという事実は消えてなくならないんだから。