第19章 誕生祝い to Sho * 3rd
俺が離す気がないのが伝わったのか、カズは諦めたようにすぐにおとなしくなった。
でもまだ俺の言葉を疑ってるようで、不安そうな顔をしていて。
「人に見られちゃうよ…?」
「全然いいよ、気にしない」
「……翔ちゃんは人目が気になるから俺に女装してほしいんじゃないの?」
それを聞いてやっと分かった。
なんで急に人目なんて気にしだしたのかと思ったけど、カズは自分が女装を求められる理由をそう考えてたのか。
理解したところで、そんな事実はどこにもないんだけど。
「違うよ、なんでそんな風に思ったの?」
「だって…他に俺に女装させたい理由が思いつかないから…」
優しく問い掛けると、カズは困ったように俯いた。
カズは本気で分からないみたいだけど、俺がカズに女装を望む理由なんて単純明快。
すごく簡単なことなのに、どうしてカズには分からないんだろう。
俺の伝え方がまだまだ足りてないってことなのかな。
「女装してほしいのはカズが可愛いからだよ」
「…………え?」
俯くカズの顔を覗き込むようにして伝えると、カズは目も口も開けてポカンとした。
何を言われたのか分からないって顔してる。
いいよ、大丈夫。カズが分かってくれるまで、何度だって伝え続けるから。
「女装したカズがすごく可愛いから。……いや!もちろん、カズはいつだって可愛いよ?女装なんてしてなくても、めちゃくちゃ可愛いんだけど!でも女装は普段とはまた違う可愛さがあるから、してほしいって思っちゃうんだ」
「翔ちゃん…」
じわじわとカズの頬が赤く染まっていく。
あんなに逸らされていた目は、いつの間にか俺をじっと見つめ返していた。