第19章 誕生祝い to Sho * 3rd
その後、俺以上に女装を期待していたらしい雅紀に不満をぶつけられたカズは、ものすごく嫌な顔をしていた。
だから俺はますます気をつけなきゃって気を引き締めたつもりだったんだけど。
雅紀と潤の会話が、文句からだんだんと恋人の可愛い女装自慢に変わっていって。
俺は話の内容が微妙に変わったことに油断してしまった。
あと単純に俺もカズの自慢をしたかった。
だって誰よりも可愛いのはカズに決まってるんだから!
でも、カズ自慢に夢中になった俺は周りが全く見えなくなって。
いつの間にかカズが繋いでいた手を離して俺から距離を取っていたことにすら気付いてなくて。
智くんに声を掛けられて我に返った時には遅かった。
静かに怒り狂う智くんの後ろで、カズは今にも泣きそうな顔で俺を見ていて。
全身から血の気が引いていくのが分かった。
カズをもう二度と泣かせないって。
絶対傷付けないって誓ったのに。
俺は何度同じような失敗を繰り返せば気が済むんだろう…
自分のあまりの愚かさに吐き気がした。
俺たちが謝ることも出来ずに呆然としている間に、カズたちはさっさと電車を下りていってしまって。
置いて行かれた俺たちは慌ててその後を追った。