第19章 誕生祝い to Sho * 3rd
「もう着くよ。降りよ」
智は俺たちには優しい笑顔を見せて、扉が開くと俺たちの背中を押しながらさっさと電車を降りた。
翔ちゃんたちのことは見向きもせず、そのままズンズン進んで行く。
今の智には有無を言わせない何かがあって。
おとなしく智について行くけど、どうしても3人のことが気になって何度も振り返ってしまう。
置いていかれた翔ちゃんたちは、しばらくその場に呆然と立ち竦んでいたけど。
扉が閉まる前に慌てて飛び降りたのが見えた。
風間も雅紀が気になるみたいでちらちら振り向いてたけど、雅紀の元へ行こうとはしない。
智みたいに怒ってはないけど、何か思うところはあるのかもしれない。
とりあえず翔ちゃんたちが追いかけてきてるのは分かったから、視線を隣に移す。
「ねぇ、智…」
「なに?」
俺に対してはいつも通りの智だけど、後ろを一切振り返らないし歩く速度を緩めたりもしないからまだまだ怒ってるんだろうな。
「ちょっと聞いてもいい?」
「いいよ。どうしたの?」
「……智も俺が今日女装してくると思ってた?」
こんなのまだ怒ってる智に聞くことじゃないかもだけど、どうしても気になるんだ。
だって朝会った時、智が俺を見た瞬間に何か言いたそうな顔をしたように見えた。
きっとあれも見間違いじゃなかったはず。
じっと智を見つめて返事を待つ。
「……うん、ちょっとだけね」
智はちょっと困ったように眉を下げたけど、あっさり頷いた。
ああ、やっぱり智もそう思ってたんだ。