第19章 誕生祝い to Sho * 3rd
「ニノ、こっちおいで」
「智…」
俺が泣きそうなことにいち早く気付いてくれるのはやっぱり智で。
そっと俺の手を取って引き寄せてくれた。
「ニノ、大丈夫?」
「風間…」
風間も心配そうに寄り添ってくれて。
2人の優しさにまた泣きそうになる。
心配掛けるだけだから泣かないけど。
でも俺の顔を見て智の目がすぅっと細くなった。
な、なに…?
笑顔の消えた智はちょっと怖くて、なんだか周りの温度まで下がった気がする。
「さ、智…?」
不安になって名前を呼んだらにこっと笑ってくれたけど。
ぽんぽんと俺の頭を撫でるとまたすぐに笑顔を消して、翔ちゃんたちを冷たい目で睨んだ。
「そこのバカ3人」
声までひんやりしてる。
いつものあったかくて柔らかい声じゃない。
明らかに怒りを孕んだ声。
大きくないのにすごく通る声は盛り上がる3人にもしっかり届いたみたいで。
その肩がびくっと跳ねて、恐る恐るというように振り向くと、智の顔を見てピシッと固まった。
「そんなに女装が好きなら自分ですれば?」
声を荒らげたりしない静かな口調は、その分智の怒りをひしひしと伝えてくる。
それでやっと俺も気付いた。
顔に出さなかっただけで、智は好き勝手なことばっか言う3人に腹が立ってたんだってことに。
「それか、最初から女装の必要がない女の子と付き合えばいいじゃん」
智は吐き捨てるようにそう言うと、くるりと3人に背を向けた。