第19章 誕生祝い to Sho * 3rd
もし、そうなら。
本当に翔ちゃんが俺の女装を期待してたなら。
言ってくれれば良かったのに…と思う。
翔ちゃんは優しいから、俺が嫌がると思って言えなかったのかな。
そりゃ、女装なんて進んでしたいとは思わないけど。
翔ちゃんが望むならするのに…
翔ちゃんのためなら何でもするのに…
それに、今は女装することに対して前ほどの嫌悪感はない。
だって翔ちゃんが可愛いって言ってくれたから。
翔ちゃんが受け入れてくれたから、今は絶対したくないとまでは思ってない。
だから、翔ちゃんが誕生日に女装してほしいって言ってくれたら普通にしたのにな。
……それとも。
翔ちゃんはサプライズを期待してたのかな。
俺が察知しなきゃダメだった?
それじゃあ、翔ちゃんの表面的な言葉を真に受けて、本当の望みに気付けなかった俺は恋人失格だろうか。
サーっと血の気が引いていく。
どうしよう…もう遅いかもだけど、今から帰って着替えてくる?
焦る頭でそう考えて、すぐにそれは無理なことを思い出す。
今日は姉ちゃんも用事があって出掛けるって言ってた。
今から帰ったところで家に姉ちゃんはいない。
俺1人じゃ何を着たらいいか分かんないし、お化粧も髪の毛も何にもできない。女の子に化けられない。
今日も姉ちゃんに可愛くしてもらったけど、女装じゃないから女の子には見えない。
でも今から出来ることは何もない。
ドーンと目の前が暗くなった。