第15章 誕生祝い to Jun * 3rd
「潤のプレゼント作りに協力してほしいって言われてニノんちに行ったら、女装セット一式揃ってて、ニノの姉ちゃんまで待ち構えててさ」
「うわ…」
それはちょっと想像しただけでも、顔がひきつりそうになる状況だな。
「よく逃げなかったな」
「逃げたかったけどね、準備万端過ぎて逃げようがなかったんだよ」
智が肩をすくめる。
「まぁ、仕方ないよね。そもそも、ニノがこの計画を思いついちゃった時点で、俺には女装する選択肢しかなかったんだと思うよ」
諦めたような口ぶりだけど、その顔はどこか嬉しそうで。
女装云々は別問題だとしても、ニノに振り回されること自体は嫌ではないんだろうな。
本当に智はニノが好きだよなぁ…
「ん?それじゃあ、ニノは自ら女装を計画したのか?」
はたと気付いて首を傾げる。
それにしては最初会った時、様子がおかしかったけど。
大体ニノが自ら女装するとは思えない。
でもこの計画を立てたのはニノなんだよな?
「そんな訳ないじゃん!」
俺の疑問を智はあっさり否定した。
「ニノのあれは、姉弟間で意思の疎通が足りなかった結果というか、姉ちゃんの誤解からのゴリ押しというか…」
ああ、なるほど。
そうだよな、ニノが好き好んで女装する訳ないよな。
「もうね、ニノが女装したくないって泣いてごねて本当に大変だったんだよ…おかげで嵌められたはずの俺にはごねる隙なんてなくてさ…」
あー、その光景めちゃくちゃ目に浮かぶわ。
思い出したのか、はぁ…と智が深いため息を吐いた。