第15章 誕生祝い to Jun * 3rd
でも罰を受けるのは後にさせてほしい。
その前にやるべきことがあるから。
「カズ」
智くんの陰に隠れて俺を見ようとしないカズに腕を伸ばす。
智くんが仕方ないなって顔して繋いでいた手を離してくれたから、カズをそっと引き寄せた。
本当は力いっぱい抱き締めたいけど、浴衣や帯が崩れちゃったら大変だから。
優しく優しく、ふわりと抱き締める。
カズは抵抗しなかったけど、抱き締め返してくれることもなくて。
その腕は力なくだらんと下がったままで。
それがカズの気持ちを表していて胸が痛くなる。
「ごめん…そんな顔させてごめん…傷付けて本当にごめんね…」
カズが過剰に女装を嫌がるのは、2年前に俺が傷付けてしまったからで。
あの日からずっと誤解し続けているカズが、どんな理由があるのかは知らないけど、今またこうやって女装をしていて。
そんなカズに対して、無反応が1番しちゃいけない反応だって。
分かってたのに、また同じことを繰り返す俺は本当に大バカだ…
「すぐに何も言えなくてごめん…カズが可愛すぎて見惚れちゃってたんだよ…」
どれだけカズが可愛くたって、そんなの言い訳になんかならないって分かってる。
それでも伝えさせてほしい。
言葉にしないとカズに分かってもらえないから。
「本当にごめんね」
「謝らないで、翔ちゃん」
何度も謝っていたら、カズは顔を上げてくれたけど。
微笑んでいるのに、その瞳は悲しそうに曇っていた。