第15章 誕生祝い to Jun * 3rd
-Sside-
時が止まったみたいだった。
息をするのも忘れて、ただただ目の前のカズに見惚れる。
何故か女物の浴衣姿で現れたカズは、上から下までどこをどう見ても完璧な美少女で。
可憐で清楚で、でもちょっと色気もあって。
びっくりするくらい可愛い。
ただひたすらに可愛い。
でもなんで?
あんなに女装を嫌がってたカズが自らこんな格好するとは思えないんだけど…
これは本当に現実なんだろうか?
俺は夢を見てるんじゃなかろうか?
もし夢なら、しばらく目覚めませんように!
だってこんな格好のカズ、きっともう二度と見れないだろうし。
絶対忘れないように目と心に刻み付けておかなきゃ!
瞬きする間も惜しんでカズを見つめ続ける。
それにしても可愛い。
やっぱりカズは天使か妖精なんじゃないかな。
そりゃ、智くんも尋常じゃなく可愛いって言うよね…
何気なく考えたことにハッとする。
………しまった!!!
慌てて智くんを見ると、ちょうど拳を握りしめたところで。
カズと双子みたいに同じ格好をして、これまた美少女にしか見えない智くんは、その可憐な外見には似合わない殺気を漂わせて俺を睨んでて。
ヤバい!!!
俺どれくらいカズに見惚れてたんだろ?
たぶん数秒だよね?
そんなに時間経ってないよね?
ギリセーフじゃね?
必死に自己弁護してみるけど。
よくよく見れば、カズは何かを諦めたような顔をして、悲しそうに目を伏せていて。
あああ、完全にアウトだよ!!
俺のバカバカバカ!!
カズにこんな顔させるなんて!!
こんなことにならないようにって智くんはわざわざ連絡くれたのに。
これは殴られても文句は言えない。
むしろ30発くらい殴って欲しい。
バカな俺には罰が必要だ。