第15章 誕生祝い to Jun * 3rd
いつもの何倍もの時間を掛けてたどり着いた地元の駅は混んでいた。
俺たちと同じく花火大会に行くであろう浴衣姿の人も結構いる。
「なんかみんなこっち見てない?」
ニノが泣きそうになりながら、俺にぎゅっとしがみついてくるけど。
残念ながら、それはニノの被害妄想でも自意識過剰でも何でもなく。
「見られてるねぇ」
注目を集めてるのは間違いない。
俺にもチクチク視線が刺さってるもん。
ただ、ニノが心配するような否定的なものではないと思う。
見世物状態なのは気分が良いものじゃないけど、別に悪意は感じないし。
単に双子に見えるから目立ってるんじゃないかなぁ。
それか、時々可愛いっていうひそひそ声も聞こえてくるから、ニノが可愛すぎて人目を集めてるだけかもしれない。
でもニノはそうは思えないみたいで。
「うぅ…やっぱり俺が変だから…」
「わ!ニノ!泣いちゃダメだってば!」
「だって…」
ぶわっと涙が溢れそうになったから、慌ててティッシュを取り出して、ニノの目元にそっとあてる。
翔くんと会う前に化粧が崩れちゃったら大変だ。
「違うよ、みんなニノが可愛いから見てるんだよ」
「そんなわけない!可愛いのは智だけだよ!」
「違うってば…」
「どうしよう…俺といたら智まで変な目で見られちゃうよ…」
ニノは頑なに認めようとしないけど。
泣くのを必死に堪えてる姿は庇護欲を掻き立てて、ますます可愛さが増してる。
これはヤバいな。
翔くんじゃないけど、ナンパや誘拐を本気で心配してしまう。
電車も混んでるのかな?
これは痴漢にも気をつけなきゃだな。
翔くんと合流するまで、ニノのことは俺が守るんだ!