第15章 誕生祝い to Jun * 3rd
駅までの道をニノの手を引いて歩く。
もう夕方なのに気温が全然下がってない気がする。
クーラーの効いた部屋でも浴衣だとちょっと暑いと思ってたけど、外に出たら比じゃないくらい暑い。
浴衣って涼しそうなのは見た目だけだな。
Tシャツ短パンのが絶対涼しいって。
なんで女の子はこんなもの好き好んで着たがるんだろうね。
まぁ、可愛いけど。
俺は着るより見る方がいいよ。
「あー…あっちぃな…」
思わず呟いてしまって、はたと口を閉じる。
姉ちゃんは、楽しんでらっしゃいって笑顔で送り出してくれたけど。
見た目が可愛い女の子になってるんだから言葉使いや歩き方に気をつけなさいねってガンガン釘をさされたんだよね。
いや、俺に女の子らしさを求められても無理だよ。
どうしたらいいのか全然分かんないもん。
でも言動のせいで男ってバレて変な注目を集めることになるのは、ニノのためにも避けたい。
考え出すと声を出すのもちょっと怖くなる。
だってどう聞いても男の声だし。
でもだからってずっと黙ってるわけにはいかないよなぁ。
俺は別に沈黙は苦じゃないけど。
こんな状態のニノを放っといたら、すぐ変なこと考えて1人で落ち込んでっちゃうから。
「俺、花火大会行くの初めてかも。ニノは?」
「……おれも」
「やっぱり人が多いのかな?雅紀たち良い場所取れたかな?」
「どうかな……」
ちょっと小さめの声であれこれ話し掛けてみる。
言葉少なだけど一応返事は返ってくるから、ちょっと安心する。