第15章 誕生祝い to Jun * 3rd
「行きたくないよぅ…」
それでも悪あがきするみたいに、ニノが小さく呟く。
泣いたら怒られるから、ぐっと唇を噛み締めて我慢してるけど。
目は涙でうるうるで。
可哀想で。
もう無理して行かなくていいよって言ってあげたくなっちゃうけど。
だめだめ!
心を鬼にしなくちゃ!
「みんなで花火見るんでしょ?高校最後の夏の思い出をみんなで作るんでしょ?」
「……うん」
小さい子に言い聞かせるみたいに、優しく問いかけてみたら、ニノはこくりと頷いた。
「ニノが来なかったら翔くんも潤も雅紀も風間も、もちろん俺も、みんなガッカリしちゃうよ?いいの?」
「……よくない」
今度はふるふると首を横に振って。
「それに今日は潤の誕生日祝いだよ?お祝いしてあげないの?」
「……する」
またこくりと頷いた。
素直で大変よろしい。
ニノだって本当に行きたくないわけじゃないんだよね。花火だって見たいし、潤のことだって祝いたいはずなんだ。
ただ、女装に対するみんなの反応が怖いだけなんだよね。
「大丈夫よ、カズ。ちゃんと可愛いから自信持ちなさい」
姉ちゃんがぽんぽんと頭を撫でてあげると、少しだけ表情が緩んだ。
まだまだ強ばってるけどね。
本当に大丈夫だよ。
今日のニノもめちゃくちゃ可愛いんだから。
みんなに会えば、不安もトラウマも消してもらえるからね。
まずは翔くんにたくさん褒めてもらおうね。