第15章 誕生祝い to Jun * 3rd
「俺の女装なんて気持ち悪いだけだもん!智は知ってるのに!なんでそんな意地悪言うの?」
その悲痛な叫びで分かった。
…っていうか、思い出した。
1年生の文化祭準備で女装した時のこと。
あの時は分担決めのために、クラス全員で女装したんだよね。
全員強制参加だったから、当然ニノも女装した。
イヤイヤした女装だったけど、ニノのメイド姿はめちゃめちゃ可愛くて。
むしろ可愛すぎちゃって。
翔くんもクラスメイトたちも言葉を失っちゃって、何も反応出来なかったんだよね。
みんなに悪気がなかったのは分かる。
ニノの可愛さに見惚れてただけだって。
でも俺もニノと一緒にいたから、あの登場した瞬間のなんとも言えない空気は身をもって知ってる。
一瞬で静まり返った教室の不自然な沈黙とか、突き刺さるようなみんなの視線とか、身の置き場がない感じとかね。
俺だって何でそんな空気になってんのか分かんなくて、どうしたらいいかも分かんなくて、嫌だなって思った。
でもニノにはそんなもんじゃなくて。
本当にトラウマになってるんだ。
2年近く経った今でも、女装にここまで拒絶反応を示すくらい…
くそっ!今からでも、あの日の翔くんたちをぶん殴りに行きたい!
いろいろ思い出して腹が立ったけど。
「はぁ?カズが気持ち悪いわけないでしょ!誰がそんなこと言ったの!?」
ニノの言葉を聞いて、俺以上に怒ったのは姉ちゃんだった。