第15章 誕生祝い to Jun * 3rd
でもニノは俺以上に驚いてた。
はいっと差し出された浴衣を見て、目をまん丸くしてる。
どうやらニノにも予想外のことみたいだ。
「うん、カズも似合うわよ♡」
姉ちゃんは俺たちの驚きには気付かないのか、ニノにも浴衣をあてて満足そうに笑ってたけど。
「ちょっと、姉ちゃん!」
「何?やっぱりカズが水色着たいの?」
「ちがうよ!何言ってんの?俺は着ないよ?」
「え?」
大慌てのニノに否定されてキョトンとした。
「なんで?カズも浴衣着るって言ってたじゃない」
「言ってないよ!」
「言ってたわよ」
そこから姉弟でしばらく言った言ってないの言い合いをしてたけど、姉ちゃんは全然引かなくて。
ちょっと考えたニノが、あ!って何かを思い出した顔になった。
どうやら心当たりがあったらしい。
「確かに言った……でも、俺は男物の浴衣を着るつもりだったの!」
「えー!?そんなの用意してないわよ!智くんが女物着るんだから当然カズも同じだと思うじゃない!」
ニノの主張に姉ちゃんが悲鳴みたいな声をあげる。
どのタイミングでその話をしたのかは知らないけど、たぶん俺の女装計画と同じ時だよね。
ニノがちゃんと男物って伝えてなければ、話の流れ的にニノも女装するんだと思い込んじゃうと思う。
「なんでだよ!俺は着ない!」
「ダメよ!おそろいで準備したんだから!」
ニノが駄々っ子みたいに嫌がるけど、姉ちゃんは許さない。
……ってか、おそろい?
よく見たら2着の浴衣は地の色が違うだけで全く同じ花柄だった。
本当におそろいだ。
この浴衣は前に姉ちゃんが友だちとおそろいで買ったものらしくて、今回俺たちのために、わざわざその友だちから借りてくれたんだって。