第15章 誕生祝い to Jun * 3rd
ニノの姉ちゃんは黙って俺たちのやり取りを見てたけど、ニノが落ち着いた頃合いを見計らって声を掛けられた。
「ごめんね、智くん」
姉ちゃんも申し訳なさそうな顔で謝ってくれる。
「潤くんに内緒にしてるとは聞いてたんだけど、まさか智くんにも話してないとは思ってなくて…」
あー、姉ちゃんは俺が分かって来てると思ってたのか。
すげぇグイグイくるなって思ったけど、それじゃ仕方ない。
姉ちゃんはダメでしょってニノを叱って。
「智くん、本当にこのまま進めて大丈夫?」
心配そうな顔で確認してくれたけど。
「うん、お願いします」
俺が素直に頷いたのを見て、安心したように小さく息を吐いた。
たぶんこれだけの準備をしてくれたのは姉ちゃんで。
きっと大変だったと思う。
俺の返事次第ではこれが全部ムダになったかもしれないのか…
俺が頼んだ訳じゃないけど、姉ちゃんは完全なる善意でしてくれてるんだし、そこに気付いてしまったらますます断ることなんて出来ない。
「智くんは色の希望はある?」
「……いや、なんでもいいです」
進んで女装する訳じゃないし、俺に希望なんてあるはずない。
投げやりな答えになっちゃうのは許してほしい。
俺の答えを聞いた姉ちゃんはにっこり笑ったけど。
「じゃあ、智くんが水色。こっちのクリーム色がカズね」
当然のようにニノにも浴衣をあてるからびっくりしてしまった。
え?もう1着はニノの分だったの?
え?この計画立てたのニノなんだよね?
ニノが自ら女装するとはとても思えなくて、頭がハテナでいっぱいになる。