第15章 誕生祝い to Jun * 3rd
はぁっと大きなため息を吐いたら、ニノがびくっと震えた。
もう怒りは消えちゃってるんだけど、簡単に許すのもなんか悔しくて。
「次からはちゃんと前もって相談して。こんな悪質なドッキリみたいなことはやめて」
「はい…ごめんなさい…」
怖い顔を作ってもうちょっと怒ってみたら、ニノはしゅんと音がしそうなほど項垂れてしまった。
可哀想でこれ以上怒れない俺は本当にニノに甘いと思う。
女装なんて好き好んでしたくないけど、ニノを泣かせてまで拒むほど嫌なわけでもない。
まぁ、学校ならノリで許されても、日常生活で女装したら周りからどんな目で見られるか分からないから、それはちょっと不安だけど。
見知らぬ他人の視線より、俺にはニノの笑顔の方が大切だ。
「……今回だけだからね」
「えっ!?」
もう一度ため息を吐いてからそう言ったら、ガバッとニノが顔を上げた。
「……浴衣着てくれるの?」
「ここまで準備されてたら、仕方ないでしょ」
おそるおそる確認してくるニノに、苦笑しつつ答えたら。
ぱぁぁっとニノの顔が輝いた。
「ありがとう、智!!大好き!!」
「はいはい」
さっきとは違う意味で目を潤ませて飛びついてきたニノの背中をトントンと叩いてあやしながら、自分の甘さに自分で呆れてしまうけど。
ま、今更だよね。
どうしたって、俺はニノには勝てないんだ。
どんな理由があってもニノの涙は見たくないって思っちゃうんだから。
ニノもちゃんと反省してるみたいだし。
今回は諦めて女装を受け入れよう。