第15章 誕生祝い to Jun * 3rd
「……智、怒ってる?」
そろっと上目遣いで俺の様子を伺うニノはとっても可愛いけれど。
「怒ってないように見えるの?」
負けるもんかと腹に力を入れて、ジロっとニノを睨む。
俺は怒ってるんだ!
睨まれたニノが涙目になって、心がぐらりと揺れたけど……ま、負けるもんか!
「だって…潤くんのお誕生日祝いなのに今年は料理もケーキも準備できないから、せめてプレゼントだけでもって思ったんだもん…せっかくなら潤くんが一番喜ぶものがいいでしょ?」
「俺はものじゃねーし!」
「わかってるけど…これが一番潤くんが嬉しいと思ったんだもん…潤くんを喜ばせたかったんだもん…」
泣きそうな顔で一生懸命訴えるニノを見ていると、こっちが悪いことをしているような気になってしまう。
いや!俺は怒ってるんだってば!
ニノを見ないようにして、必死に自分に言い聞かせる。
俺は怒ってる……怒って……怒っ……
でも、どんなに目を逸らしても、ニノの悲しそうな顔が視界に入ってしまって。
あぁ、やっぱりダメだぁ…
ぐらぐら揺れてた心はあっさり敗北の方へ倒れた。
ニノにこんな顔されちゃったら、俺の怒りなんて持続するわけがないんだ。
たぶん今回のこの計画は、いいこと思いついちゃった♡的な、いつもの軽いノリで決めたんじゃないかと思うんだけど。
潤を喜ばせるために考えたっていうのは嘘じゃないだろう。
ニノは仲間をすごく大切にする優しいやつだから。
出来ればそこに俺への配慮も欲しかったけど。
たぶんニノは本気で俺のことを可愛いって思ってくれてて。
女装させようとしたのも、そこに嫌がらせとか笑いものにしてやろうとか、そんな意地悪な気持ちが欠片もないのは信じられる。