第15章 誕生祝い to Jun * 3rd
「さっ!あんまり時間もないし、ちゃっちゃと始めましょ!」
「え?いや、あの…」
俺の怒りには気付かないまま、パンっと手を叩いて姉ちゃんが動き出した。
「智くん、どっちがいい?」
「俺、着るなんて言ってな…」
「うーん…こっちの水色の方がいいかしら?」
「だから、俺はっ…」
「でもクリーム色も似合うわね…」
俺が文句を言おうとしても、ことごとく遮られ、全く聞いてもらえず。
姉ちゃんは浴衣を俺にあてながら悩み始めた。
浴衣は2着用意されていたようで、交互にあてては首を傾げている。
「カズはどっちがいいと思う?」
「俺には分かんないよ…どっちも似合いそうだもん。姉ちゃんに任せる」
「じゃあ、水色にしようかな」
「いいと思う。可愛いよ、智♡」
ニノがにっこり笑って褒めてくれるけど、そんな可愛い顔したって誤魔化されないよ!
俺は怒ってるんだ!
ムスッとした顔で黙り込んでいたら、さすがにニノも俺が不機嫌なことに気付いたみたいで。
「どしたの、智?」
こてっと首を傾げてるけど。
どうしたのじゃないよ!
「なんなの?こんな騙し討ちみたいなことして」
「え?」
「プレゼントっていうから、てっきり何か作るんだと思ってたのに!女装させられるなんて聞いてない!」
「だって…先に言っちゃったら、智は来てくれないかもしれないって思ったから…」
気まずそうに目を逸らしたニノの声はどんどん小さくなっていく。
そりゃそうだ!
こうなるって知ってたらノコノコ来なかった!
学校行事なら仕方ないと諦めもついたが、なんで完全プライベートでまで女装なんかしなきゃなんないんだ!