第15章 誕生祝い to Jun * 3rd
毎日充実していたからか、時間が経つのがすごく早くて。
気付けば夏休みも終わりが見えてきた。
それはイコール俺の誕生日が近付いて来たってことだ。
ニノの誕生日にみんなでディズニーランドへ行くのが恒例になったみたいに、俺の誕生日はうちでみんなで料理を作って誕生日会をしてから花火を見るのが恒例になっている。
この年で誕生日会だなんて未だに照れくささはあるけれど。
祝ってくれるみんなの気持ちが嬉しいし、みんなで花火を見ることが毎年の夏の楽しみになっていた。
それが、今年はみんなを家に招くことが出来なくなってしまった。
実はこの夏は父親が一時帰国していて。
花火大会の日に、友人を招いてホームパーティーをすることにしたらしいのだ。
話を聞いたのは昨日で。
正直ちょっとショックだった。
でも、なかなか日本に戻ってこれない父と、夏休みもほぼ毎日友だちと会っている俺。
優先順位なんて考えるまでもなく決まっていて。
分かったと素直に頷くしかなかった。
「風間バイトは慣れた?」
「うん、だいぶ。まぁ、まだまだだけどね」
「そういえば、おばさんが新作ケーキがあるからまた食べにいらっしゃいって言ってたよ」
「新作ケーキ?行く行く♡」
「行く行く♡」
今日は久しぶりに美術室に6人揃っていて。
予定が変わってしまったことを早く伝えなきゃと思うんだけど、みんなも花火を楽しみにしてるのを知っているから、どう考えても場を盛り下げてしまう内容を伝えるのは気が重くて。
なかなか切り出せずに、みんながわいわい話してるのを黙って聞いていたけど。
「ケーキと言えば。潤、今年の誕生日ケーキは何か希望あるか?」
翔にそう話を振られて、腹を括るしかなくなった。
余計な手間を掛けさせてしまう前に伝えないとな…
「ごめん…そのことなんだけど、みんなに謝らなきゃいけないんだ…」