第14章 修学旅行
そのまま智は空をじっと見つめて動かなくなった。
きっとこの景色を目と心に焼き付けているんだろう。
俺は邪魔をしないように、空を見上げる智の綺麗な横顔を黙って見守っていたんだけど。
「どうせならニノたちにも何か描いてあげようかな」
智が空を見上げたまま、突然ポツリと呟くからちょっとびっくりしてしまった。
どうやら俺がぼんやりと見惚れてる間に、智の脳内スケッチは終わっていたらしい。
「どう思う?なんか買うみたいだし別にいらないかな?」
一応確認してるけど、たぶん智はニノにプレゼントしたいんだと思う。
同棲のお祝い的な?
本当に智はニノのこと大好きだよなぁ。
「すげー喜ばれると思うよ」
智がニノのために描いた絵を、ニノが喜ばない訳がない。
ニノも智のことが大好きなんだから。
ただ、本当は智の創り出すものは全部俺が独り占めしたいから、内心ではちょっとだけ嫌だなと思ってる。
さすがに独占欲強すぎで引かれそうだから口には出さないけど。
「そっか!じゃあニノたちにも描こうっと!何がいいかな?」
智は嬉しそうに笑うと真剣に考え始めた。
「同じ空の絵?それとももっと沖縄っぽい方がいいのかな?」
「シーサーでいいんじゃね?」
「シーサーか…」
冗談半分で適当に言っただけだったのに、意外にもシーサーは智の創作意欲を刺激したらしい。
智の目がキラキラ輝いている。
「シーサーなら絵じゃなくて粘土で立体的に作った方がいいかな」
どうやら智の中でシーサーの置物を作ることが決まってしまったようだ。
すまん、ニノ!
せっかく回避したのに、結局シーサーの置物からは逃げられないみたいだぞ。
…って、俺のせいだけど。