第14章 修学旅行
反応のない俺を不審に思ったのか、智が視線を戻して。
「ふはっ」
俺を見るなり吹き出した。
「なんて顔してんの」
俺はよっぽど情けない顔をしていたんだろう。
智がケラケラ笑い転げる。
でも、そもそも俺がこんな顔になったのは智のせいだ。
それなのにこんなに笑われるのは納得いかない。
「智のせいだろ」
とりあえず反論するけど、ぶすっとした声しか出ない。
だって俺は色んな意味で傷付いてるんだ。
「そんな無茶な条件出すほど俺と暮らすのが嫌なのかよ」
「嫌なんて言ってないでしょ」
拗ねる俺に、智は呆れた顔をしてるけど。
その目は優しくて。
本当に嫌がってないのが伝わってきて。
遠回しなお断りかと思ったけど、どうやら俺の取り越し苦労だったみたいで、ホッと安心する。
でもそれならあんなこと言わないでほしい。
照れ隠しだったんだとしても、俺は本気でショックを受けたんだ。
「言ってるのと同じだろ」
「朝ちゃんと起きてって言っただけじゃん」
「無理」
簡単に言うけど、起きれるならとっくに1人で起きてる。
胸を張って言い切ったら、智にクスクス笑われたけど。
俺はその笑顔に勇気をもらった。
「だから智が起こしてよ」
「……優しくなんて起こしてあげないよ?」
「いいよ、智なら何でも」
自分でも不思議だけど。
智が相手なら、どんなに眠くても穏やかに起きれるんだ。
智が起こしてくれるなら苦手な朝も頑張るから。
「俺と一緒に暮らしてくれる?」
もう一度同じ言葉を繰り返す。
智はまた頬を赤らめたけど、今度は目を逸らすことはなくて。
「…うん、いいよ」
仕方ないなって笑いながら頷いてくれた。