第14章 修学旅行
チラリと隣の智を見ると、まるで母親のような目でニノを見守っていた。
いつものことだし、そこに恋愛感情がないことは分かっているから、別にヤキモチを妬いたりはしないけど。
ちょっとは俺のことも見てほしくて。
「なぁ、智…」
「ん?何?」
呼び掛けてみたけど、智の視線はニノに向いたままだったから。
「俺たちも一緒に暮らそうか」
智にしか聞こえないくらいの小さな声で囁いてみたら、ものすごい勢いで智がこっちを向いた。
智を振り向かせることが出来て満足する。
「もちろん、いつかの未来の話だけどな」
「……は?」
付け足してみたけど、智は目をまん丸に見開いて口をポカンと開けて驚きを隠せないでいて。
そのちょっと間の抜けた顔がすごく可愛くて、ついクスっと笑ってしまった。
笑われた智がムッと眉間にシワを寄せる。
「……急になんなの?からかってんの?」
俺は馬鹿にしたつもりなんてなかったけど、智は俺を睨んでくる。
笑ってしまったのは悪かったけど、それは智が可愛かったせいだし。
揶揄ってると思われるのは心外だ。
「俺は至って大真面目だし、本気の本心だよ」
笑うのをやめてまっすぐに目を見て伝えたら、智が今度は困惑顔になってしまった。
「だって…急に変なこと言い出すから…」
「全然変なことじゃないだろ」
人の望みを変なこと呼ばわりするなんて失礼な!