第14章 修学旅行
実現はまだ先の話でも、自分の望みを口に出してニノに受け入れられたことで、翔の夢はバーーーっと広がっているようだ。
「これ玄関に置かない?」
「玄関?」
「いつか2人で暮らす家の玄関!」
翔は目を輝かせながら、まだ見ぬ新居の玄関にシーサーを飾りたいとか言い出して。
「シーサーって魔物や災いを追い払ってくれる沖縄の守り神なんだよ」
シーサーの説明から始まり、将来の約束をした記念に思い出になるものがほしいとか、それを将来暮らす家に飾りたいとか、それならカズを守ってくれるお守りになるものがいいとか、力説してる。
ニノは黙って翔の熱弁を聞いていたけど、首を傾げてちょっと考えてから首を横に振った。
「うーん…いらない」
「ええっ!なんで?」
「だってこんな大きいの置けるか分からないもん」
おお!ニノがキッパリ断った!
ニノも全身から幸せですオーラを振り撒いてるから、てっきり翔みたく夢見る夢子さん状態なのかと思いきや、意外と冷静だ。
翔は、まさかニノに否定されるとは思っていなかったのか、ガーンとショックな顔を隠せずにいるけど。
そんな翔を見てもニノは自分の意見を翻したりはしなかった。
なんか、2人の関係がちょっとだけ変わったような気がする。
翔はニノの前では常にカッコよくあろうと必死に取り繕ったりしていたけど、今は隠すことなく情けない顔を見せてるし。
ニノの過剰な可愛こぶりっ子もなりを潜めている。
2人とも素を出せていて自然体に見えるというか。
お互いによく見せようと頑張るのをやめたのか、肩の力が抜けた感じがする。
それでもうざったいくらいラブラブなのは変わらないけど。
良い変化だと思う。