第14章 修学旅行
どこよりも一番落ち着く翔ちゃんの腕の中。
俺も翔ちゃんの背中に腕をまわしてぎゅっと抱きつきながら、大きく息を吐いた。
慣れないことしたから疲れちゃった。
怒るのはやっぱり苦手。
平和が一番だよ。
翔ちゃんは、俺がくたっと体重を掛けて寄りかかっても、動じずにしっかり支えてくれて。
「カズの愛を再確認出来た」
って、それはそれは嬉しそうにニコニコしてる。
さっきまでの不安顔が嘘みたい。
どうやら俺の愛は無事翔ちゃんに伝わったようで、頑張って怒った甲斐があると安心する。
でも不安もちょっと残ってる。
「俺、いっぱい “ばか” って言っちゃったのに怒ってないの?」
想いを伝えるためとはいえ、力いっぱい罵ってしまった自覚はある。
あれだけ好き放題言われたら、いくら翔ちゃんが優しくたって嫌な気分になったと思うんだ。
パッと見怒ってる感じはしないけど、内心どう思ってるのかは分からないから、こわい。
でも翔ちゃんは、俺の不安を何言ってるの?って笑い飛ばした。
「あんな可愛い告白されて怒るわけないでしょ」
「へ?」
いやいや、何言ってるのはこっちのセリフだよ!
どんだけ思い返してみても、どこにも可愛い要素なんてなかったよ!
翔ちゃんは一体何を見て何を聞いてたんだろ?
首を傾げる俺を見ても、翔ちゃんは笑うだけだ。
ちょっと翔ちゃんの感覚は理解できないけど。
まぁ、本当に怒ってないのならいいのかな。